【d.p】
彼女は久々に感じる強い痛みに、何故か安堵した。

痛みを感じることは、すなわち生きている証だから。

でもそれももうすぐ、終わる。

静かな気持ちで、彼女は悟ってしまった。

お腹で蠢いているのは、自分が今まで封じてきたモノ。

それがこの世に生まれ出でようとしている。

己の命を犠牲にして―。

今まで抑えて来たモノが、出てくるのだ。

この体を食い破って―。

一際強い痛みが全身を襲った時、彼女の意識は暗い闇の中に沈んだ。

それと同時に、眼に宿っていた光が消えた。

しかしお腹は動きまくり、やがて、膨らみが限界に達した。

ブシューっと部屋に血が飛び散る。

溜まっていた分、勢い良く噴出したのだ。

裂けたお腹から、一本の美しい花が咲いていた。

美しい赤い大輪の花は、とても良い匂いがした。

まるで果物が腐り間際に放つ、甘く蠱惑的な匂いを。

しかし花はみるみる萎れていき、その匂いも消えていった。
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