摩天楼Devil
――あれ?ど、どうしよう、なんか……


妙に、もやもやして、頭というか、心の中が気持ち悪い。


苦しくて、なんか……

篤志さんの腕の中だと、余計に。


気が付いたら、視界が濁ってた。


「妃奈?」


何か異変を感じたのか、篤志さんが急に離れ、顔を覗き込んできた。


「な、何をない、泣いてるんだ!?」


珍しく、オロオロとしながら、ついに溢れる水滴で濡れる、私の頬を拭う。


「に、兄さんに本当は会ってたのか?まさか、何かあったのか!」


なぜ、そんなお兄さんを気にするんだろ?


本当に知らない人なのに。


首を横に振ると、相変わらず焦りながら、じゃあなんだ? と訊いてくる。


自分でも分かんないんです、と言おうかと、自分で目を拭きながら、彼の顔を見た。

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