摩天楼Devil
腕だけでなく、腰にも力が入らず、抵抗はできなかった。


彼の肩に置いてた手を落とすと、篤志さんはやっと舌を戻す。


それでも、しばらくは唇を重ねてた。


「……ん……」


と、吐息が漏れた。


篤志さんは、終わった後、倒れそうになる私を支えるように、自分の方に抱き寄せる。


私も胸にしがみついてた。


「あ、あつ……しさ……なんで……」


「罰。雇い主を笑うな」


「わ、笑ってません……」


――嘘だけど。


「も、もう……こんなキスしないでください」


「……嫌、なのか?俺とするのは……」


初日の私なら、当たり前よ、とか怒鳴ったかもしれない。


今は、え、えーと、としか言えず、最終的に、

「嫌じゃないです」と答えてた。

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