摩天楼Devil
気持ちがあるから、いっぱいしたいんだろうし、こんな簡単にしてほしくない。


「俺としたくないなら、頑張ればいいだけだ」

と、隣の男性はまだ冷めたように言う。


「違う。罰則でするのが嫌なの!」


――あれ?


言ってしまった後で、自分の言葉のおかしさに気づく。


篤志さんも同じことを思ったのか、ずっと背けてたくせに、顔を合わせてきた。


「罰則が嫌?」


「そ、そりゃそうです、けど……あの、罰則ってマイナスなイメージが、って言うか、悪いことですよね。それで、キスをするのが嫌で……」


やっぱりおかしい。私、何言ってんの?


これじゃ、まるで――


「キスじゃなくて、方法が嫌なんだ?」


わずかに、彼が笑みを浮かべる。


それに気付いたのは、次のセリフを言ってしまってから。


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