摩天楼Devil
「そうです!ペナルティみたいなキスは嫌なんです――」


次に言おうした言葉を、はっとして押さえた。


口に手を置くと、顔が熱くなるのを感じた。


――“普通のキス”がいい、と言いかけたんだ。


すでに、彼は分かっていた。


「キスするなら、普通にしたい?」


いつかみた、悪魔の微笑みがそこにあった。


「わ、かんな……」


あわあわ、と震え、口が動かない。


「わからないねぇ。勉強の前に――」


「ん……っ」


試し、と言わんばかりに、またKiss。


しかも、またすぐに、こちらの唇をこじ開けようとする。


「……そ、れ……やだ……っ」


逃げるのに夢中で、一瞬自分がしたことが分からなかったが、

舌から逃れられたと安心し、多少冷静に戻ると、肩を撫でる男性が目の前にいる。

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