摩天楼Devil
「今みたいに寝てたり、いるのに出られないとき。来る日なのに、俺がいないときは、入って待ってたらいい」


まただ。手の中の鍵を意識すると、ドキンって……


何で?当たり前じゃん。

バイトなんだから、雇主が鍵を渡すのは普通だよ。


何で、こんな反応するの?


自分の心臓の動きや、精神状態が理解できず、困惑してたのに、

篤志さんはもっと困ることを言う。


「妃奈。膝を貸してくれ」


彼は額を押さえながら言った。


断る理由もなく、従った。


床に座ると、寝転んだ篤志さんの頭が、膝に乗る。


ふわりと髪の毛にくすぐられる。


彼はすぐに瞳を閉じる。


――綺麗……


男性とは思えない、白い艶やかな肌。

長めのまつ毛。


疲れて眠るつもりなら、喋りかけるわけにもいかず、その寝顔を見てた。


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