摩天楼Devil
ふと、机を見上げると、背表紙が確認できた。


『不動産のノウハウ』
『不動産業界の経済』

ほかにも、難しい名前が並ぶ。たぶん、経済関係。


確か、経済学部だったよね。

不動産なんて勉強もするの?

通信販売会社とか、その業界の勉強はしないのかな?


きっと、お兄さんと、お父さんを助けていくんだもんね。


再び、寝顔に視線を戻した。


――勉強もいいけど、無理しないでね。



そして、急だった。


パチリ、と彼の瞼が開いた。


ゲッ と焦ったのは、寝顔にみとれてた状態で、目が合ったから。


「妃奈?君こそ、顔色悪くないか?」


ブンブン、と首を振った。


それを、彼が止める。


「ちょっと、こっちへ……内密に話したいことがある」


起きる気配もなく、寝たまま、手招きする。

もちろん、膝枕のまま。


これで呼ばれると、こうするしかない。


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