摩天楼Devil
腰を曲げ、膝に乗る、篤志さんに近づく。


まもなく、後悔する。


「……ん、ぐッ」


急に彼から顔を近付けてきたと思えば、今や当たり前になってしまった、強引なキス。


のちに、篤志さんにも言われたが、我ながら、学習能力がない。


――騙されすぎ! 隙与えすぎだよ!私……


「ん――ッんん!」


疲れてるとは思えないくらい激しく動いた舌が抜き出されると、

漏れた唾液を急いで手の甲で拭いてから、怒った。


「もう、やだ!何で、いつも急なの!?こんな苦しいのするの!」


今は起き上がった男性は、これまたいつも通り悪びれない。


「だから、慣れろって」


「普通のキスもしたばかりで、慣れるわけないじゃん……大体、バイトに来たら、いつもしてる……」


「そうだな。なんなら、キスもドレス代に変えるか?1回何円にする?」


篤志さんは、キスをコンビニに並ぶ商品みたいな気軽さで言う。

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