摩天楼Devil
それを怒ってると判断したらしい。


「ごめんって。妃奈なら、喜ぶと思ったよ。早く、返済したがってるだろ?」


――そう、だよね。


返済して、さっさとパシリなんて辞めて、ちゃんとしたバイトをするって……


これこそ、最大の変化。


本来なら、

じゃあやっぱり、キス代金を追加しましょう、

とでも言ったかもしれないのに、実際に口にしたのは――


「……それでも、嫌……」


私のこの態度をどう考えたのかは分からないけど、彼の手は優しく頭と背中を撫でる。


「もう言わないよ。そうだよな。女の子に対して失礼だった」


「今までの態度、みんな失礼です」


そう、ちょっと嫌味を言ったのは、ペッタンコ、痴女って言われたことを思い出したから。


篤志さんも思い出したのか、

「ごめん。でも、キスはいいんだろ?」

と、笑った。


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