摩天楼Devil
あれだけ、困惑したり、焦ったり、緊張してたりしたのに、今は彼の体温と匂いに包まれて、妙に落ち着いてる。


――結構、筋肉質なんだ。

匂いは、香水かな?

なんて、考えてた。


また、真悠子とのやり取りを、思い浮かべた。


『違うもん!篤志さんはかっこいいんだから!』


自分のセリフ。


かっかっ、と徐々に体温が上昇してきた。


よ、よりによって、こんなときに、こんなセリフ思い出すなんて!


「妃奈?大丈夫か?」


様子がおかしかったのか、タイミング悪く、篤志さんが顔を覗き込む。


「……妃奈?熱あるんじゃないか?真っ赤だぞ。熱いし……」


と、頬や首筋を撫でる。


「何でもありません!」


急いで離れると、背中を向けた。


――もう、こんなの私らしくないよ……。


「妃奈。調子が悪いみたいだな。今日は帰って、ゆっくり休め。送ってくよ」


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