摩天楼Devil
それと――


『兄さんには、絶対に近づくな。声をかけられても、絶対シカトしろ』



「私なんかが考えても仕方ないか……」


さて、行こうとしたとき、また似たような場面に遭遇した。


しかし今回は、私は完全に固まってしまった。


なぜか、足も震えてきた。


「じゃあ、調子はいいわけね?」


グラマーな体型でありながら、長く細い足で、ハイヒールを履きこなした女性が、カツカツと歩く。


「ええ、ご心配なく」


お兄さんのときと違い、落ち着いた様子の篤志さんが、女性の横に並ぶ。


「心配してたわよ。なんせ、昔からの仲じゃない?」


「今は兄さんの婚約者だろ」


「釣れないわよね。女を教えてあげたのは、私でしょ」


その言葉だけ聞くと、一瞬意味がわからなかったけど、女性の仕草で想像がつく。


彼の首の後ろに腕を回し、ミニスカートに構わす、足を絡ませようとした。

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