摩天楼Devil
「やめろよ。こんなとこで。兄さんもとんだ女と婚約したもんだ」


「あら?お互い様よ。彼だって、他にも女がいるんだから。最近、新たに気に入った子猫見つけたらしいわよ」


篤志さんは不快げにため息を吐いた。


「どうせ、親同士が決めた結婚だし。篤志君の方がよかったなぁ、なんて」


「ほら、早く乗れよ」


たぶん、お兄さんと同じ車種。


運転手がドアを開け、彼女は乗り込む。


「ね、気が向いたら、また……ね?子猫だけじゃ飽きるわよ」


「兄さんに伝えろ。その猫に近づくな、ってな」


篤志さんが、窓から顔を覗かせてた女性に、顔を近づけ睨みつけてた。


すると、彼女は腕を伸ばし、彼の後頭部に手を置き、自分の方に引き寄せた。


赤い唇が、篤志さんにくちづけをした。


私は、風呂敷を落とした。


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