摩天楼Devil
結局、私達はアパートに入った。


落ち込む私に、彼は紅茶を煎れてくれた。


勉強の時は、隣に座ってた彼も、今日は向かいに座った。


二者面談の時の教師みたいに、篤志さんは組んだ手をテーブルに置き、生徒見るように、私の顔を窺う。


「何があった?」


「何でもない……そろそろ叔母さん帰ってくるでしょうから、もう行きます」


「帰ってきたなら、物音で分かるだろ。……目、真っ赤だぞ。なんて言うんだ?」


やたら冷静な口調が不満だった。


「泣かされた、っていう」


「俺に?」


私は頷いた。


――嘘じゃないもん。


残った紅茶を一気に飲みほすと、空になったカップだけを見据えてた。


すると、ややあって、篤志さんは隣に移動した。


「気に入らないことがあれば聞く」


――聞いたためしないじゃん。


少し身体を傾け、彼の方を向こうとしたとき、チクッと足に痛みが。


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