摩天楼Devil
「ん?」と、痛みがした部分を撫でると、何かが張り付いてた。


「ピアス……」


赤い丸石の、シンプルなデザイン。


手のひらに置いたそれを、ひょい、と隣の男性が取る。


「レイさん、落としたな」


「レイ……さん?」


「ああ、さっきの女性。赤がラッキーカラーだと。これ、貴重なルビーって言ってたくせに。眠りこけるから」


彼は呆れ顔で、ピアスをテーブルに置いた。

一方、私は足の痛みが、胸に移動したように、また苦痛を感じた。


「眠りこける、って……泊まったの?」


「え?ああ、深夜に来てさ。兄さんに言われて、様子見にきたって。事前に聞いてたけど、あんな時間に来るなんて……酔っ払ってさ」


特に何も気にする様子もなく、彼はあっさりと話す。


隣のパシリの心の中は、また一気に乱されてるというのに……


そして、一番に思い浮かんだのが、さっきのキスシーン。


次の瞬間、私はありえないことを、口にしてた。


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