摩天楼Devil
「ダメですよ。篤志さん、困っちゃう」


「……構わないけどね……君はアイツが好きなんだな? 来る、と言う時の顔が嬉しそうだった……今も」


へ? と頬に手を置いた。


すると、重ねるように、隣の男性の手が……


「お兄さ――んぅ……!?」


突然、唇を塞がれた。
手じゃなく、唇で。


当たり前みたいに、舌も。


――いやぁっ


篤志さん以外の唇と舌の感触に、パニックになる。


――いや、なんで……!?


舌は無遠慮に激しく動き、気持ち悪い。


「んく……ぁ……」


ようやく離れると、すぐにドアを開けようとした。


「鍵開かないよ」


「なんで……なんでこんな……」


「可愛いから」


「れ、レイさんがいるのに――」


「この時代に政略結婚はないよね」


と、先ほどまでの笑顔が嘘みたいに、クックッ、と怪しげに笑う。

怖い、と思ったが、次には少し安堵した。


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