摩天楼Devil
「寝る前に、熱を――」


「妃奈。帰れと言ったろ」


私は黙って、体温計を渡した。


彼は呆れたように、ため息を吐いた。


「分かったよ」


38度.5分あった。


たぶん、まだ上がるだろう。


横になった彼を見ながら、また帰れと怒るだろうな、と覚悟してた。


が、篤志さんは傍に来るように言う。


従うと、彼はまた起き上がった。


「あ、ダメですよ!寝てないと――」


両手を掲げて、止めに入ったら、私は捕まった。


「あ、篤志さん?」


反射的に、背中に手をまわすと、熱が伝わってくる。

声も苦しげだった。


「……兄さんは……俺を、昔から嫌ってた……」


――え?


突然聞く、兄と弟の関係。


「あの人は、俺から奪うことを、娯楽にしてた」


「ご、らく?」


「そう……楽しいんだと……最初は、父さんがくれたロボットのおもちゃ」


つまり、幼い頃から。


「めちゃめちゃに壊されてた」


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