摩天楼Devil
私の涙を手で拭くと、おやすみ、と言って、ベッドに戻った。


「もう少し、傍にいていいですか?」


「マスクしてない。ダメだ」


「ちょっとだけ」


私は横に座った。


「おばさんに聞いた……妃奈のせいのじゃないからな。責任感じることはない」


私は何も答えなかった。


「妃奈は優しすぎる。俺と大違いだ」


「そんなことないです……」


二つの意味で、否定した。


私は優しいってわけじゃない。

篤志さんだって、十分優しい。ちょっと意地悪な面があるだけ。


彼は目を閉じてた。


「ひ、な……も、もどれ……」


たどたどしい声は、寝息に変わった。


私はマスクをしていないのをいいことに、調子に乗って、擦る程度にキスをした。


もうちょっと傍にいたい、と枕元に頬をつけ、横に座ったままでいた。


そして、気が付けば――


「ひな……妃奈!」


「ん――ママ、何時?」


「ママじゃない!」


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