摩天楼Devil
頭はぼーっとしてた。

「ああ、そう……」


薬による眠気で、ますます頭はぼんやり。


そっと、大きめの手のひらが乗る。


ママが急に成長?


「ママ?」


「誰がママだ。だから、言っただろ。うつるって」


好きな人の顔に、私は目を見開いた。


「あ、篤志さん!?」


上体を起こし、声を上げてしまい、ケホケホと咳き込んだ。


篤志さんの手が、背中を撫でる。


「ほら、ゆっくり寝ろ」


立場は逆転だ。


「うつしたくないから帰ってください……」


「俺がうつした菌だろ。免疫あるから大丈夫だよ」


余裕の笑みから、にんまりとしたちょっと怪しい顔になり、


「たとえ、キスしたとしても……ね」


「だ、だめです!」


密かに、寝顔にキスしたことを思いだし、布団に勢いよく潜った。


「こら、妃奈。氷枕ちゃんと当てろ。ほら、頭乗せて」


好きな人の手が、髪や頬を撫でる。


その優しさに、素直に従う。


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