摩天楼Devil
ごっこ、って。

一応、大真面目だったけど……


「篠山駿君、覚えてるわ。中学にあがるまえに、引っ越しちゃったでしょ?」


「帰ってくるって。楽しみだわ」


ママ同士は友達で、私は比較的疎遠だったが、二人は連絡を取り合ってらそうだ。


「ああそう。よかったね」


悪いけど、どうでもよかった。


さっさと片付けて、部屋に戻ると、取っておいた経済新聞を拡げた。


『神崎不動産の跡取り問題に決着。
藤堂グループの二男 篤志氏に。

近日、発表を兼ねたパーティーが開催される』


――これが関係しているんだろうか?


急にいなくなった理由が、分からない。


ううん、分からないふりをしているだけ。


私の中で、ある予想がついていたから。


好きじゃない女に、突然好きだと言われて、迷惑だったからに違いない。


でも、それならそうとはっきりと振ってほしかった。


やだよ。こんな中途半端。


< 193 / 316 >

この作品をシェア

pagetop