摩天楼Devil
第三章

ピクチャー

――10年前


「にいちゃん、にいちゃん」


俺はある男を追いかけた。


「兄ちゃん。どこ行くんだぁ?」


「うっせ、付いてくんな」


17歳の高校生が、ランドセルを背負った俺に、舌打ちをする。


3歳上の実の兄には、けっして付いていかないし、兄ちゃん と呼ばなかった。


「兄ちゃんのけちんぼ!」


「誰が、テメェの兄貴になったよ」


彼との出会いは、ほんの半年前だった。


神崎のおじさんが、ウチに来たとき、ちょうど学校に行く支度をしてた俺を見つけ、送ってくれると言った。


運転手付きの車に乗り、後部座席で二人座り、学校に向かう途中、

「ちょっと止めてくれ」

と、真剣な声で運転手に言った。


彼が降りた道では、高校生が歩いてきた。


神崎のおじさんを見つけると、露骨に不快そうな顔をした。


俺は窓から、二人の様子を窺ってた。


閉まってたので、声は聞こえなかった。


やがて、不快そうな顔のまま、高校生は横手の小さなアパートに入っていった。


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