摩天楼Devil
兄ちゃんはらしくもなく、ため息を吐いた。


「自由に、人目を気にせず、シャッターが切れる場所ねぇかなぁ」

と、空を見上げてた。


「海外行きてぇな……そうだ。行くか」


この時は、冗談だと思ってた。


しかし、彼は卒業後、本当に行ってしまった。


寂しくない、と言えば嘘になるが、夢を追ってる兄ちゃんはスゲーと思ってたし、


たまに、各地の絵はがきを送ってくれてた。

俺にとって、やっぱり兄は、ニイチャン だった。


それでも、世界を飛び回る彼とは、連絡が途切れたりもした。


兄ちゃんは気ままな人で、帰国しても、教えてくれないこともあり、“あの時”もそうだった。


俺が15で、彼が23になっていた。


彼が帰国してた、と知ったのは――


彼が空を飛んだ後だった。


飛んだ――


そう、飛び立った。


空港からまた国外に行った、


というなら、どんなによかったか。


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