摩天楼Devil
『篤志をくれないか?』


神崎のおじさんは、まるでペットを買うように言う。


父さんは気にもとめず、淡々と答える。


『役員の方は大丈夫なのか? どうせ、自分達の子ども等を推すつもりだったのでは?』


『あの会社は、俺が立ち上げたんだ。どれだけ苦労したか分かってるだろう。

役員なんて、戦友だろうが、他人は他人。俺は自分の信頼できる血縁者に継いでほしい』


『なるほど……しかし、イトコの息子 じゃあ血も薄い気がするが』


『構わない。篤志は頭もいい。申し分ない。どうせ、この家には遼以外は必要ないんだろ』


兄の名前と、その内容にどきりとする。


父さんは否定する。
いくらなんでも、それしゃ本当にペットみたいじゃないか。


俺は耳を澄ました。


しかし、彼は何も話さず、代わりに母さんが割って入った。


『いいんじゃありません?こちらだって、表向きと“裏”じゃ違いますもの……ねぇ、るみさん?』


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