摩天楼Devil
Rose decora の服は高校生にしたら高い。


お金がいるはずの、あの子。


叔父なら、誰よりも可愛がり、何より身元が確実な“姪”を推薦するだろう。


彼には、妃奈が“確実に釣れてから”

事実を話そう。


だけど、必要だったのだ、と気持ちをちゃんと伝える。


少しのあいだ……

ちょっとだけもらえた、自由なひとときを、

藤堂家も、神崎家も、金と地位と欲望に汚れた世界を知らない女の子と、過ごしてみたかったんだと――



おじさんは、嘘を知ったあとも、妃奈を雇うことを許してくれた。

ちょっと、気まずい様子だったけど。




「さ、桜田妃奈と申します!」


慌てたように、彼女は頭を下げる。


――知ってるよ。


君はすっかり忘れてるみたいだけど……


ムカついたから、大人げない態度を取った。


そして――



「んんッ……!」


顎を掴み、唇を奪った。


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