摩天楼Devil
『子猫はどう鳴く?可愛いだろうな……ぜひ、聞いてみたいものだ』


なんとか冷静を保ってた俺だったが、一気に乱された。


「な、何を言ってる……?父さんの友人の姪だと言ってるじゃないかっ」


携帯を持つ手に汗が滲む。


『女を黙らせるなんて簡単だ。現に、子猫はお前にずいぶん従ってるらしいじゃないか』


“写メ”のことを思い浮かべ、ズキン、と胸が痛んだ。


『まぁいい。せいぜい気をつけて飼うがいい。プラモデルのように、接着剤じゃ治らないからなぁ……女の子は……』


くっ、くっ、と嫌らしい笑い声を聞かせてから、彼は電話を切る。

怒りの次に、焦りが現れる。


脳裏に、今まで壊されたり、傷つけられてきた物が、次々と浮かんだ。


――ここに、彼女を入れるわけにはいかない。


何より、妃奈は物じゃない。


――大切な者には変わりないがな……




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