摩天楼Devil
もう一人は、やたら冷めているようだが。


一方、妃奈の様子は、風邪とは別におかしかった。


社交辞令で、連絡先を交換しようとしたときだ。


ダメ、と大声で言ったかと思えば、ベッドから飛び出し、俺にしがみついてきた。


「ダメだもん……」


――ハハ。友達までいじめられると思ったかな?


心の中で、苦笑していたのだが、そうではなかった。


『好きになっちゃいました』


彼女は真剣な瞳で、そう俺に告げた。


ヤキモチを妬いてくれたのだった。


心臓が鳴った。


彼女にバレないようにしなければ、とも思った。


――ありがとう。嬉しいよ。


そう答えれば、妃奈が傷つかずにすむ。


何より、違った未来を迎えられたかもしれない。


だが――


『子猫はどう鳴く?可愛いだろうな。ぜひ、聞いてみたいものだ』


『女を黙らせるなんて簡単だ』


『プラモデルのように、接着剤じゃ治らないからなぁ。女の子は』


アイツの声と、プラモデルが交互に思い出された。

< 227 / 316 >

この作品をシェア

pagetop