摩天楼Devil
どうせなら、

こんな辛い想いするなら、


早く出よう。


作業を急いだ。


木島さんに連絡を取ると、光熱費などの解約の手続きをしてくれるという。


すべて彼に任せ、俺は“あの人”に会いに行った。


神崎不動産のビルの最上階に、社長室がある。


秘書の女性の案内で、中に通される。


神崎のおじさんは、ソファーで様々な資料を読んでた。


「今度また、マンションを建てることになった。お前に任せようかと思ったがな」


「俺はまだ、普通の大学生ですよ」


「わはは、そうだな。はしゃぎすぎてな。やっと、俺にも息子ができるんだな」


手招きをされ、向かいに座る。


「にしても早かったな。アイツも驚いてたよ。大学卒業まではあのアパートにいさせろ、って言われると思ってたくらいだ」


「いえ、早く神崎の家風に慣れたほうがいいかと思いまして」


と、自分でも笑えない冗談を言った。


「ほう。感心なことだな。さすが、唯一の跡取りとなる息子だ」


< 230 / 316 >

この作品をシェア

pagetop