摩天楼Devil
息苦しさを我慢しながら、愛想笑いを浮かべた。


「お前に、預けたい部屋がある。寝室もある。もちろん、キッチンもな。家具一式も揃えてるから、自由に使うといい」


その鍵を、彼は木島さんを呼び、渡した。


「案内を頼む。付けたときにも言ったが、しばらくは彼を頼るといい。信頼できる男だ」


そのマンションの一室は、都内から外れた位置にあった。


木島さんの運転する車で案内された。


木島さんは比較的、無口な人で、運転中は赤信号でもあまり話さない。


しかし、今回は珍しく、彼から喋りかけてきた。


しかも、妙なことを言う。


「……また、あの部屋です。もし、何かありましたら、至急ご連絡くださいませ」


「え?……はぁ……」


木島さんは、重々しく、目を閉じ、ため息を吐いた。


嫌な予感はしたが、実際に部屋に行ってみると、落ち着けた。


リビングには白いソファーがあり、社長室の真っ黒なものより、座るとホッとした。


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