摩天楼Devil
彼は、ちょっと照れ顔。


――はーん。惚れた女がいるんだ。


「それで、帰国?姫を迎えに?」


「違うけど……将来はそのつもり。幼なじみ、っていうか、ガキなりに真面目に付き合ってた、っていうか……」


「早い話。今でも好きなんだろ?頑張れよ」


初対面だが、親しみを込め、ポンッと肩を叩いた。


「へへ、まぁ。そうだ。今日、連れてきたんだ。招待されてる、って話したら、自分も行きたい、って言い張って。招待状って、ペアOKだったでしょ。

けどさ、レイさん見たら、どこかに逃げちゃって。知り合いだったのかなぁ?」


――レイさんと?


まぁ、彼女も顔広いしな。


「篤志様、次のご予定がございます」


と、木島さんが寄ってきて、一礼をした。


「じゃ、そのお姫様は、またいつか紹介してもらうよ」


と、篠山駿に言って、木島さんに案内されながら、その場を後にした。


「篤志さん」と、誰かに呼ばれた気がしたが、

人と人の間を潜るように移動する中で、錯覚だったかも、と片付けた。


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