摩天楼Devil
会場を出て、廊下をしばらくは木島さんと歩いていたが、

彼の携帯が鳴り、俺は先に行くことにした。

会場から離れると、関係者は減っていき、ホテルだったのだが、

ホールが近付くと、完全に一般客ばかりになる。


中央に向かって下りて行くような、カーブのついた階段を進んでいく。


ホールの一階に着くと、正面の玄関に行こうとした。


その時だ。


「あつしさ……待って!篤志さん!!」


――え?


この呼び方と声に、驚いた。


大概の人間は、篤志様、御曹司、神崎の坊っちゃん、なんて呼んだ。


俺はゆっくりと、後ろを振り返る。


覚えるのあるドレスに身を包んだ、覚えのある女の子が階段を駆けてくる。


ドレスや場所に合わせてか、最後に見たときよりも、ずっと大人っぽいメイクをしているが、


それは間違いなく――


「妃奈……」


なぜ、ここに?


いや、それも謎だが、それよりも……


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