摩天楼Devil
「彼女の叔父さんと、俺の父が知り合いなんだ。あ、藤堂のね」


「あ、そうなんだ。初耳。なんだよ、教えろよなぁ」

と、彼女の横に立つと、なれなれしく肩を抱いた。


――バカだな、俺は。

なれなれしいのは当たり前。


そうだ。彼女がそうなんだ。


篠山駿自身が話していた、“姫”だ。


そして、彼は約束通り、“紹介”してきた。


「さっき話した、その……女です。えっと、まぁ、婚約者なんですけどね」


は? と思う前に、妃奈が怒鳴った。


「違うでしょ!ママ達が勝手に――」


「許嫁は許嫁だろ?うっせーなぁ」


篠山駿は耳を閉じる仕草をした。


「違う!だから、それはママ達が勝手に決めたことじゃない!」


違うの! と妃奈は、次には俺のほうを見た。


「……そう」と、俺は答えた。


妃奈にしてみれば、違う と否定したことに対し、そうなんだ、と納得したと判断したらしい。


少し、安堵した表情だった。

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