摩天楼Devil
だから、あえて二度言った。


「そうなんだ」と。


そして、続けた。


「よかった。おめでとう。叔父さんも喜ぶよ」


笑顔でそう言うと、「え?」と妃奈。


「婚約おめでとうございます。どうか、お幸せに。陰ながら、お祈りしています」


心から、祝福して笑った。


本心だ。


彼の方が、篠山駿が、きっと妃奈を幸せにしてくれるだろう。


聞けば、かつては恋人だったんだ。


付き合っていくうちに、俺のことなんか忘れて、彼に気持ちが戻るさ。


記者会見のときのような作り笑顔じゃなかったからか、妃奈はまもなく、泣き出した。


篠山駿は動けなかった。


たぶん、急なことで驚いたのと、妃奈が玄関に向かって、一人で走り去ってしまったからだ。


やや間があってから、

「お、おい、妃奈!」と追っていった。


篠山駿が去ってまもなく、

「お待たせしました。……何かございましたか?」

と、木島さんが寄ってくる。

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