摩天楼Devil
ウィンドウを覗いてた女の子はもういなかった。


どのみち、知らない子だったけど。


「妃奈……」



俺はすべての予定をキャンセルして、あのマンションに帰った。


予定の中には、実父との対談もあり、彼に責められたが、

体調を悪くされた、と木島さんが連絡してくれ、そこまで怒られることはなかった。


夜、白いソファーに座り、目の前の窓から、夜景を見てた。


空には星がないが、地はキラキラと光ってる。


「あの子がいたら、跳ねて喜びそうだな」


ま、篠山駿でも十分見せられるだろ。


篠山駿か……


妃奈がかつては好きだった男……


「くそっ、なんでた……!」


ちゃんと笑顔で祝ったじゃないか。


胸が痛む。殴られたうえ、刺されたように強く、激しく――


どうせ、俺にはどうしようもないんだ。


神崎の束縛が待ってる。


俺は逃げられない。


実母にも去られ、何一つ残ってない。


もう――


何一つ……


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