摩天楼Devil

その名はアツシ

『愛してるわ、マイク』


『ああ、僕もさ。マリア』


ママが見ている前で、二人は唇を重ねる。


たぶん、彼女はマリアになりきっているんだ。


うっとりと、映画にくぎづけだ。


私は映画もママも、冷静に眺めてた。


「やあね、そんなつまんなそうに見て、楽しいのアンタ。興味ないなら、紅茶でも入れてきてよ」


床に寝そべり、ママは再びテレビ画面を見つめる。

「パパがいたら怒るよ。だらしがないな。だいたい、ママまで私をパシリにする」


娘の悲痛な声に、彼女は起き上がる。


「篤志君だっけ?いいわよねぇ、あのK大に通ってるなんて、最高じゃない。

叔父さんも好青年って言ってたし……。そもそも、嫌なら辞めればいいじゃない」
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