摩天楼Devil
――コッチニ、コイ――


「兄ちゃん……?」


確実に幻覚なんだけど……


俺は木島さんに電話した。


「行きたいとこがあるから、神崎のおじさんに適当に遅れるって言っておいて」


『どちらにご用でしょう?何時頃、車をまわしましょうか?』


「いや、いらない。自分の足で行く」


一方的に電話を切ると、ある場所に向かった。


関係者以外、立ち入り禁止で、警備員がついていたが、

俺の顔を見ると、慌てたように中に通してくれた。


エレベーターは、警備の関係と、関係者のために起動してた。


警備員には、「手を合わせにきた」と告げ、時間は取らないから、と一人にしてもらった。


この屋上に来るのは初めてだった。


「さてと、会いにきてやったぜ。……義理の弟がさ」


俺はゆっくりと、柵に近付く。


「そこにいるか?」


――コイ……コッチダ――


「ああ、分かったよ……」


もう嫌なんだ。


何も見たくない。


何も知りたくない。


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