摩天楼Devil
「別に、恋人にしてくれなくても……」


「そういうことじゃない……妃奈を巻き込みたくない」


彼女は食い下がる。


「ただの部下とかバイトなら、近くにいても不自然じゃないでしょ?木島さんみたいに……」


――木島さん? 妃奈は知ってたか?


そういえば、どうやってここに?


なぜ?


「妃奈。どうしてここに来た? そもそも、制服って。……学校は?」


「朝ね、通学路で木島さんに止められたの。急いで車に乗ってくれ、って。

パーティーで篤志さんの傍についてた人だったから、話を聞いたの。

そしたら、篤志さんが危ないかもしれないって」


――木島さんが、なぜ?


その疑問に首を傾げると、妃奈は話を続けた。


「木島さん、このマンションであったこと話してくれた。

だから、私も彼も余計に不安になって……急いで追ってきたの。
そしたら、そしたら……ッ」


妃奈は思い出したかのように、また泣きはじめる。


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