摩天楼Devil
女の子を抱きしめ、なだめていると、出入口のドアが開いた。


革靴の鳴る音が近付くと、俺は顔を上げた。

木島さんは相変わらずの無表情で、座りこんでた俺達を見下ろす。


「一応、様子がおかしかったのは気付いてましたから。

あなた様をお守りするのが、わたしの役目です。
何より、“二度とごめんでしたから”」


「木島さん?」


「わたしがここに送ってしまったんです。“あの方を” 考えを見破ることができずに」


兄ちゃんも、神崎の跡取りになることを拒否していたが、

世話役の木島さんを受け入れる、あのアトリエを使用するなどして、

なんだかんだで父親を認めはじめたと、木島さんは思っていたらしい。


「あのアトリエは呪われているかもしれませんね。あなた様も出た方がよろしいかと……」


木島さんはまるで、妃奈とともに“帰る”ことを勧めているようだった。


俺自身も決心が揺らいだが、すぐに首を振る。


せいぜい、連れ戻されるか、住処が変わるだけで、神崎と藤堂からは逃げられないさ。


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