摩天楼Devil
「いや、俺は神崎篤志だ。木島さん、あんたは車で待っていてくれ」


そう命じると、彼はふぅと軽くため息を吐き、

分かりました、と淡々と言うと、また革靴を鳴らしながら、屋上を去っていった。


足音が消えてすぐ、妃奈の顔を上げさせた。


「さ、お帰り。木島さんに送らせる。みんな心配してるよ」


「やだ……一緒……」


こんなとこが、まだまだ子どもなんだよな。


別れの時だが、ちょっと笑ってしまった。


「妃奈。また、連絡する」


「本当?」


「ああ、約束だ」


「じゃあ」と、彼女は携帯を取り出す。


変えてしまった、俺の今の連絡先を訊く気だろう。


「妃奈、時間がない。早く学校に行かなきゃ。君の連絡先は変わってないだろ?」


「う、うん」


「なら、俺から時間を見つけてするから。もう遅刻だけど、欠席にするわけにはいかない。

君のお母さんには、俺からも詫びの電話をしとく。急ごう」


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