摩天楼Devil
何とか納得させ、木島さんのとこに行かせた。


妃奈を乗せた車が去るのを見送ると、俺はタクシーを拾った。


車内で電話をかけた。


「神崎のおじさん、いや、義父さん。これから行きます」


――あなたの新たな息子として……


逃げも隠れもしない。


妃奈。

俺はもう死んだりしない。


二度と、自分の命や運命を捨てたりしない。

だから、安心してほしい。


「ごめんな……」


嘘吐いて、ごめん。


ああでもしないと、帰らないと思ったから。

携帯のメモリーから、“妃奈”を消した。


わけあって、妃奈を借りてしまい、遅くなったと、神崎の名前で彼女の自宅に電話をすると、その履歴も消した。


それから、ある男に電話をした。


自分と妃奈の間にあったことを簡単に話した。


キスしてたことは伏せた。


「……悪かったな」


『はっ、パーティーで止めるんじゃなかった。いや、俺があんたをぶん殴っておけばよかった』


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