摩天楼Devil
「はい。分かってます。はっきり言ってくださって、ありがとうございます」


だめ、泣いちゃ……


「こ、これで、ふっ……きれます……もう、だ、大丈夫で、す……あの、ただ最後に……言わせてください……」


振るえる声と、涙腺を抑えながら頼んだ。


「……なんだ?」


と言いつつ、彼は背を向けた。


よほど、嫌われたみたいだ。


「余計なお世話なんですけど……あの、無理はなさらないでくださいね……身体もなんですが、心のほうも……」


「心?」


「あ、はい。へ、変なこと言っちゃいましたね。だけど、篤志さん無理してるように見えるから……本当の気持ち隠してる……

お父さんとかお母さんに対して、本当に伝えたいことがあるなら、ちゃんと素直に――」


「ああ、本当に余計なお世話だ」


相変わらず背中しか見せてくれないから表情が分からないけど、明らかに怒った口調で、

すぐに黙って、謝った。


「ごめんなさい……謝りついでに、その……もう一つ言わせてください……」


「なんだ?」と言いながら、まだ背中。


まぁ、いいや。この方が言いやすい。


< 277 / 316 >

この作品をシェア

pagetop