摩天楼Devil
このままいても、のぼせるだけ。
ここで倒れても、余計な恥をかくだけだと思い、脱衣所に戻った。
でも、着たのは、制服だった。
参考書を忘れて、学校に行ったために着た、制服。
だけど、私服でもこの心情は穏やかにはならなかったはずだ。
バスローブをやめても、帰りたい気持ちに変わりはない。
篤志さんはどういうつもりなんだろう?
今頃、そんな風に思う。
シュンちゃんに、渡せない、と言ってくれた。
けど、気持ちをはっきり聞いたわけじゃない。
お兄さんに襲われたことも思い出した。
膝が震える。
――もう、やだ……
恐る恐る廊下に出ると、玄関へ逃げそうになった。
でも、叶わなかった。
「妃奈。おいで」と、奥から声をかけられた。
ビクン、と反応しながら、言われるがまま、リビングへ赴いた。
彼は、ソファーに座っていて、手招きをする。
恐怖心を抑え込み、覚悟を決めた。
が、それは取り越し苦労に終わった。
「……へ?」
「へ? じゃない。カーテンの前に立ってごらん」
と、篤志さんは目の前の、カーテンの閉まった窓を指差す。
「はぁ……」
ここで倒れても、余計な恥をかくだけだと思い、脱衣所に戻った。
でも、着たのは、制服だった。
参考書を忘れて、学校に行ったために着た、制服。
だけど、私服でもこの心情は穏やかにはならなかったはずだ。
バスローブをやめても、帰りたい気持ちに変わりはない。
篤志さんはどういうつもりなんだろう?
今頃、そんな風に思う。
シュンちゃんに、渡せない、と言ってくれた。
けど、気持ちをはっきり聞いたわけじゃない。
お兄さんに襲われたことも思い出した。
膝が震える。
――もう、やだ……
恐る恐る廊下に出ると、玄関へ逃げそうになった。
でも、叶わなかった。
「妃奈。おいで」と、奥から声をかけられた。
ビクン、と反応しながら、言われるがまま、リビングへ赴いた。
彼は、ソファーに座っていて、手招きをする。
恐怖心を抑え込み、覚悟を決めた。
が、それは取り越し苦労に終わった。
「……へ?」
「へ? じゃない。カーテンの前に立ってごらん」
と、篤志さんは目の前の、カーテンの閉まった窓を指差す。
「はぁ……」