摩天楼Devil
とりあえず、従う。


「目を閉じて」


これも従った。


ややあって、ウィン、と機械音がした。


「???」


それから、「いいよ。目を開けて」と命じられた。


私はゆっくりまぶたを上げた。


カーテンはなくなってた。

先ほどの機械音は、彼がリモコンで、カーテンを開けた音だった。


「わぁあ!星みたい!」


キラキラと、いろんな色と大きさの光が、暗闇の中を瞬く。


ビルから漏れる光だったり、車のライトだったり、信号だったり……


普段、歩いててもなんとも感じない光達。


「すごいすごい!こんなに綺麗に見れるものなんだぁ」


「予想通りの反応」


ふと彼が呟き、微笑む。


「予想通り?」


「ああ、君ならそんな風にはしゃぐと思ってた」


「……もしかして、この夜景を見せるために……?」


「うん、ここに妃奈を呼びたかった」


――なんだ。そっかぁ。


私の予想は外れてた。

一気に安堵して、再び窓の外を眺めてた。


「お腹すいてたんだろ?」

と、ハンバーガーを渡されたが、夜景が嬉しくて、窓の前で立って食べた。


「こら、行儀悪い」


背後から注意を受けた。


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