摩天楼Devil
少しだけ泣いて、私もベッドから下りた。


そして、篤志さんがいるリビングに戻った。

彼は目頭を押さえるようにして、ソファーにもたれてた。


「……帰ります……」

と言うと、篤志さんは立ち上がる。


「そうか。でも、もうこんな時間だ。木島さんは仕事だし。泊まっていけばいい。もう何もしない」


私は泣きながら、首を横に振った。


「ごめ、ごめんなさい……嫌わないで……」


そう返したのは、彼の口調があまりにも事務的だったから。


「妃奈……」


篤志さんはゆっくり寄ってきた。

向かい合うと、すぐに抱き寄せてくれた。


「それは俺のセリフだ。悪かった、怖い思いをさせて」


「……私が悪いの」


「違う」


「だって……怒ってる……」


「怒ってない。自分には腹立てたけど、な」


ちょっとだけ、安心したけど、すぐに伝えたいと思った。


「篤志さんが好きです」

と、胸に顔を埋めた。

彼はやっと笑ってくれた。


「ありがとう。じゃあ、一つ頼むよ」


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