摩天楼Devil
言った時は必死だったけど、改めて口にすると、かなり恥ずかしい。


そのうえ、彼はまたキスをする。


ただ、愛しさがこみあげてきて、苦しくて仕方ない。


慣れない息継ぎ。

息を荒くしながら、彼に言った。


「し、しんしつ……」


自分が言おうとしていることが恥ずかしい。
一旦、止めた。


「妃奈?」


「しん、寝室に……戻る……」


篤志さんは誤解した。


「ああ、ゆっくりお休み」


「ち、がう。違うの……い、一緒に……」


彼は一瞬戸惑った顔を見せてから、ふっ と微笑する。


「無理はするな。急ぐことでもないんだ。ゆっくりでいい」


「一緒にいたい。今夜、このまま……いたいの……」


恐怖がなくなったとも、身体に自信があるとも言わない。


まだ怖いし、身体だって、できたら見せたくない。


だけど――


「篤志さん……お願い……」


心臓が破裂しそう。
それでも、彼にしがみつく。


「……分かった。本当にいいんだな?」


こくん、と私は頷く。

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