摩天楼Devil
「ああ」と返事をすると、迷わず私を運ぼうとする。


シーツが落ちる。


「ち、ちょっと、篤志!」


「今更、恥ずかしがるな。着替えも持ってくるから待ってろ」


と、バスチェアの上に私を座らせた。


「覗かないでね」


「はいはい。朝食、用意しとくよ」


「あ、それ、私がするのに」


「いいんだよ、着替えたらまた運ぶから」


篤志が優しい。

もう、パシリじゃないんだよね……


同時に不安になる。


大丈夫だよね。

ずっと一緒にいられるんだよね。


用意されてたバスローブを着てたら、篤志が来て、今度はリビングに運んでくれた。


彼の首に腕をまわした状態で、私は篤志の顔を覗き込む。


「どうした? キス?」


昨日もこんなことあったな? なんだっけ?
あ、そうだ。


「シュンちゃんが迎えにきた時……んンッ」


思わず、声に出してしまった。


篤志が力強く、唇を押し当てる。


「――その名前を口にするな、と言ったろ」

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