摩天楼Devil
「だろ?やばいな……マジで帰したくねぇ」


ここで、どちらかの携帯が鳴る。


私は着うたにしてるから、篤志のだ。


彼は近くのテーブルに携帯を取りに行く。


ディスプレイを確認すると、なんだか安堵したような表情で電話に出る。


「木島さん、何?」


木島さん と聞いて私もホッとしていたが……


「何? 神崎のおじ、いや、お義父さんが?分かった。明日の今朝に来てくれ、と伝えてくれ」


電話を切ると、彼は、ふぅ、とため息。


「何? 神崎社長が……」


「明日、彼がここに来る。俺が、家に帰らないで、ここにいるのが気になったらしい」


――もしかして、ピンチ? なの?


「妃奈。いてくれるな?」


「え? い、いるって――」


ことは……


「いたら、会っちゃうんですけど」


思わず、敬語に戻った。


「うん、だね」


だね、ってやだよ!


「ちょっと待ってよ、篤志さん!……はっ」


口を押さえたが、もちろん遅い。


彼は携帯をテーブルに置くと、くるりとこちらに向く。


「さん、だって?」


真顔だけど、怒りのオーラを感じる。


「さっきまでは、すっかり彼氏彼女のように話してたのに……そんなに嫌か?」


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