摩天楼Devil
今度は私が、仰視する立場になったが、恐怖でごくりと息を呑んだ。


だって、鋭く睨むんだもん!


「覚えてろ。忘れられない日にしてやる」


――ひぃ~!!


「あ、あの……チョコのこと、何が言いたかった……んでしょうか」


彼は顎から手を離し、背を向けた。


「嬉しかった。ありがとう……本当は、その時から君を選んでた。傍に置く女性を」


恐怖のドキドキが、優しい“トクン”に変わる。


気がつけば、背後から抱きついてた。


「……妃奈?」


彼が、お腹に置いてた私の手を取り、唇を当てた。


「これから何かが起こるか、本当は予想できない。
挑発して、あの人を怒らせた以上、ただではないはずだ。
何があっても傍にいてくれるか?」


神崎社長という、本来なら安易に会えないような人物を思い出した。


正直、怖い……


指先が震えるのが分かった。


篤志がゆっくりこちらを向いた。


「俺はワガママだ。こんな状況でも、怖い人間を敵にまわしても、それでも君を失いたくない」


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