摩天楼Devil
「どういうつもりですか!?」


ママが叔父夫婦にあげる、というハムのセットを持ち、私は悪魔に怒鳴った。


「人前で女の子に叱られる趣味はない」


怒鳴った横断歩道では、主婦らしき女性が数人、チラチラとこちらを見る。


「か、関係ないもん……」


と反論しつつ、恥ずかしくて、大人しく信号が青に変わるのを待った。


不意に、片手が軽くなる。

ハムを奪われたのだ。


「あ!それは叔父さん達にあげるのよっ」


彼は何も言わず、無言で歩き出す。


絶対、言い返してくると思ったのに……


「ほら、早く来い」


藤堂さんは固まっていた私に、顎で指示する。


もしかして、持ってくれた……だけ?
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