摩天楼Devil
「焼き豚にしましょう。ねぇ、藤堂さん?」


彼は、はぁ? と言いたげな表情だったが、自分が料理を命じたことを思い出したのか、

「ああ、そうだな」と呟く。


そして、ここでもまた二人きりの時とは違うキャラクター。


「おじさん、焼き豚貰ってもいいですか?」


ママに対しては、大人びた好青年。


叔父さんに対しては、無邪気さを残した、同じく好青年といった感じ。


「ああ、どうぞ」


騙されてるよ、と教えたくなるぐらい、藤堂さんの笑顔見て、叔父さんは嬉しそうだ。


騙されてる、か。


なんで私には、その優しかったり、無邪気だったり……そんな笑顔向けてくれないんだろう?
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