摩天楼Devil
メガネは外した方がいいと思って、そっとそれに手を伸ばした。


「ん……ひ、な……」

「え?」


不意に名を呼ばれ、手を止めた。


が、彼は起きる気配はない。


寝言?


寝言で、私を呼ぶ?


あ、まさか――!


「夢の中まで私をパシリに使っているわね」


勝手な想像で、不快になる。


このまま、帰るか。


と、私は出て行こうと考えたが、メガネがずれる。


危ないなぁ。割れたりしたら、と今度はちゃんと外し、たたんで、傍にあったケースに入れた。


「ひな……?」


寝言だと思ったので、返事はせず、帰ろうと背を向けた。


「無視とはいい度胸だ」


「へぇ?」


振り返る余裕もないくらい、素早く捕まる。
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