摩天楼Devil
勢いよく、後方に引っ張られたので、とっさに目をつぶってしまう。


「キャッ」と、小さく悲鳴を上げ、何かに座ったと分かった瞬間に、目を開けた。


「妃奈。冷蔵庫の中は見たか?」


その問いは、耳元からした。


お腹には男の人の手。


――わ、私が乗ってるのって……


「妃奈。聞いているのか?」


首を横に向けると、藤堂さんが間近に……


「ご、ごめんなさい!すぐに退けます!」


「俺が乗せてるんだ」


がっちりと、彼の手に力が込められる。


「じゃ、じゃあ、放してください!」


「なぜ?」


「なぜ? じゃないです。やることあるんでしょ!?」


下りようとすればするほど、藤堂さんは自分の方に、私の身体を寄せる。
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